2008年2月28日 (木)

虹1

  虹

   笹倉

 妙高のスキー宿へ行く、女流棋士が滞在していて若しやと思ったら、鍵は開いていて、がらんどうでもって、湯も抜いてある、シーズンが終わって、いっとき休みらしく。

春さらば人の住まはぬ心地してスキーの宿に雪は降りつつ

吾妹子やこれが宿りに湯も抜けて名物シェフのアイスクリームは

 雪が降って来た、もう春たけなわというのに。いったん海へ出て、秘湯の宿という、ちょうど反対側、笹倉温泉へ、なんでそうなるって、ようもわからん。そうしてやっぱり雪が降る。

山越えに妹とし行かむ笹倉のしくしく春のあは雪ぞ降る

寄せ返し海の辺わたり笹倉やしくしく春のあは雪ぞ降る

 車はスノーを履いてない、もしや帰れぬかも知れぬと、

笹倉の笹を茂みか夜もすがら妹と寝ねやる雪は降りしけ

 焼け山もひうちも烏帽子岳も見えなかったが、いちめんの雪を路面だけ溶けて、

晴れ行けばシルバーロードぞ烏帽子岳ひうちの辺り見えずかもあらむ

 フォッサマグナ館を見学、玉髄かなにか人の手指そっくりの石、

姫川のフォッサマグナのお宝は哀しや妹が手指の玉ぞ

 長いキャタピラのあるすべり台に乗ったら、おしりの皮を擦りむいたって、痛くって歩けない。

姫川のさらに心の幼びて夕陽に戯れこは滑り台。

 水産高校の練習船を見学、

鱈汁を食らひて能生の若人の船を見ししがあひ別れなむ

  

   初島

 初島リゾートホテルに部屋を持つ会社につとめる子がいて、一泊一万円で優雅に遊ぶ、七人のmixy仲間でもってさ。

卯の花はいずこにありやほととぎす鳴く声聞かな初島に行く

 てんなんしょうではなくって、長い花が伸びて、あれはなんていう、そうだうらしまそうと云った、浜辺は大小の岩。

潮騒の荒きいわをが片思ひうらしまそうの花にしぞ咲く

 熱海で女の子四人と家族風呂に入る、うわ冥土の土産と、これやこれなん人畜無害のじっさ、

我れをしも若かえるでの初々し熱海乙女が潮の香り

 海は荒れ、わしは帰りの切符をぶっとばし、潮に濡れたほっぺたはほろ苦く、

初島にしましく舟の行き返りうしをに濡れぬ乙女を悲し

   

   湯沢

 岩手から帰るのを、越後湯沢で待ち合わせ。点検の為の空っぽのゴンドラがぶら下がる、折しも花は満開の、

ゴンドラを空しく見上げ宿れるに湯沢の花は今盛んなり

 老人どもの団体客が一組、

芽吹きあへ独り湯舟に浸れるに思い起こさば妹も一人ぞ

しかすがに霧らひ明け行く花に花よもすがらせむ妹を悲しも

客もまた集ひいよらむシャンデリア二人をのみし朝げしつらむ

 越後一の寺という雲洞庵を尋ねる、

かつて知る大修行なる雲洞庵荘厳せむは芽吹きあへたる

禅堂の畳はくされいたずらに客のよるさへ芽吹きあへたる

  妙高

 もう一度妙高高原へ、

二人見し湯沢の花もいや遠のみずばせふ咲く池の平らに

 新しい宿があった、芽吹く白樺の林に、

妙高は霧らひこもして白樺のこは唐松の新芽吹かへる

 贅沢なオーディオルームがあった、持参のフィガロの結婚を聞く。

忍びあへ宿を仮らむにモーツアルト浮かれ呆けて膝枕せむ

 いもり池

いもり池みずばせふなむかそけしや忍びあへせむ妙高の峰

水辺なし美はしものぞかくのごとく満山芽吹く鶯の鳴く

 別れはまた、

うしを寄せ別れも行かむ直江津のなほなほ悲し春の雨降る

  安曇野

 mixyの仲間と別れて安曇野へ行く、姫川に一泊、

宿らふは春ののげしの花に咲く乱れし妹は浴衣のみして

 フォッサマグナを行く、雪の越後路はトンネルを抜けて、

ふぉっさまぐなトンネルを抜け安曇野や我れを迎えむはだれ白馬

 花の喫茶店があったのに、お休み、

田の末ゆこれも記さむ花の店安曇野にして去り行く惜しも

 碌山記念館に高村知恵子の絵葉書があった、

思ひきや何を記さむ安曇野や高村知恵子の切り絵を求め

  鬼無里

 まだ通ったことのない道を行こう、山を越えて戸隠のこれは裏っかわ。

山吹の散らへるあらむ春や春小川村には天文台が

 鬼無里は山里、やまざくらの花吹雪を行く、妹らがり花吹雪して七曲がり八つ曲がりせむ鬼無き里は

 戸隠山の背には北アルプス。

戸隠の神さび深く仰がむはつぎねふ雪のアルプスにしぞ

 学生のころ中社に泊まって、

戸隠の中社と云はむもうでむは名物そばを何十年

 ぶなの林の新緑、

黒姫は面隠みすらむしくしくの新芽吹かへるぶなの平を

雪消えて寝ねやるいくつ妹と我と赤倉山につつじ花咲く

直江津を波の別れのもの悲し忍びあへせむ行方知らずも

  長久保の宿

 中仙道長久保宿の本陣には、子供が手をつないで七人、十人ほどの五葉松があった。

本陣の五葉の松は失せにけれかつかつ残るその門構へ

 疎開して小学校の五年まで過ごした故郷、

吾妹子や時はうつろひ長久保のこは山川の形せるらく

 真田は母方の実家、

真田なる弓の稽古をいついつか眺めせしまに庭のさんしゅゆ

松本にしくしく雨のあひ別れ二人し行けば青葉を深み

 女の子二人の誕生祝いに罷り出る、例によって上野駅しのばず口に集合、介護老人をみなして迎えて、

しのばずの蓮すの花はなほ咲かね問へるいくたび極楽とんぼ

 前の日鯉を釣りに行ったら、日に焼けてまっくろけ、

郭公の鳴きわたらへば信濃河野鯉も釣れじ日は照りまさる

 でもってみなして、木村屋のあんぱんを買って食いながら銀ぶら。

木村屋のあんぱんを食らひ坊主我が銀ぶらせむやこは桜花

 買ってえといってぶら下がると、グッチのバッグ三十万円とか、

買ってえとおねえちゃん二人ぶら下がる浮き世さながら文無し坊主

今し我が嬉し涙か鼻水か取っつかれたる両腕重し

 日比谷公園はドイツ祭り、ソーセージとビールをぎっちり詰め込んで、

千人のビールをあをる青夏やドイツ祭りのこはファンファーレ

 酔っ払って膝枕、

すずかけの下なる我れを膝枕バッハも知らに未来永劫

 池袋に熊谷守一美術館を訪ね、

みなとして尋ね当てたる我が欲りし熊谷守一天狗の落とし札

吾妹子がアクセサリーを手に入れし一筆書きの守一の猫

 かぶと屋のうなぎを食う、三尾分も食って、きもの串刺しやら、心臓のぴくぴく動くやら、先生さまの奢りみたいだぜこれ、贅沢万歳。

見よや君百戦錬磨の包丁のぴっくり動く心臓をこれ

 池袋のホテルに一泊、

これはまたしのび逢ふ瀬を吾妹子が池袋なむあした明け行く

 駅前には黒い背広のやーさんがどっと押し出し、こりゃぶっ魂消、

我見しはごろつきどもが池袋何にのさばる蒼天蒼天

 湘南ライナーに乗って横浜へ、水上バスで赤煉瓦倉庫の公園へ、

ぼらは跳ねくらげは浮かび浜っ子の遊覧船ぞ夏を明け行く

 赤煉瓦は大にぎわい、広場には白つめくさ、ヘリコプターを売っていたり、サンバを踊っていたり。

赤煉瓦いにしへ今を盛んなりサンバに踊りつめ草かおる

 遊園地の向こうに帆船日本丸が、

浜っ子をみなと未来の初夏や日本丸なむ順風満帆

 タイ料理店でハッピーバースデイ、二人の名を記すケーキもついてさ、

タイ人も和尚と云ふぞ妹らがりハッピーバースデイビールで乾杯

 ワシントンホテルは日本で一番人気だってさ、費用はリーゾナブルの上に、これは二十二階百万ドルの夜景付き。

ハッピーバースデイ急転直下浮かぶには百万ドルの夜景の中に

 赤い靴というバスに乗って、おねえちゃん二人は老人介護のまあさ、港の見える丘公園にはバラが咲いて、

ハイカラは赤い靴とふ年はふり港の見える丘公園に

 元町は銀座よりもいいんだってさ、電車に乗って鎌倉へ

日は燦々チョコレートを食らひ元町やなんにも買はずいざ鎌倉へ



| | コメント (0)