夏の歌3
松之山
直江津からどこへ行こう、松之山へ行ってみようという、たいていわしがドライブコース。
田を植えて人を待つらむ吾妹子が松之山なむさ霧らひ深み
大正時代の木造三階建て、松之山温泉凌雲閣はなを健在で、
地震にもこれやこれなむ耐え耐えて七十二年を凌雲閣は
ドライブコースがあって霧の中を行き、ぐるっと回って帰って来るつもりが、国道117号線へ出てしまった、飯の六時には間に合ったが、とんだ遠足。
しかすがに大巌寺なむ牧場にぞ霧らひ晴れては牛の行く見ゆ
菖蒲草花はあれども山の井のしもつけ花ぞ妹にしあらむ
信州へ入ると千曲川
吾妹子と千曲の川の廻らひに信濃へ行くか白雲浮かぶ
善光寺へ行こう、中学は門前を過ぎて通う、思い出と云えば思い出の、うわいっぱいよったくって善光寺参り。
善光寺牛に引かれてもうでむはいにしへ今も何変はらずや
マッカーサー司令でもあるまいし、病気が傳るから触れるなと書いてあったが、
いにしへも今ももうでぬ信心のつるつる禿げのおびんずるさま
パチンコで鳩を撃ったり、
門前をおのれ通へる学校の半世紀を過ぎて夢に見るかや
わしみたいな年寄りをなんでまた、もったいなやの、ー
欲りし我が愛し乙女が心映え清やけき世々を通いけるかも
井の辺も渡らひ行くに吾妹子が松之山なむ霧らひも隠もせ
妹と寝て若楓でのみずみずし紅葉ずるまでの秋を迎へて
鬼無里から白馬へ抜ける道、
妹が子とまさきくあれば鬼無里なむ早苗を渡り白馬へ行く
釣り竿を買って二人できすを釣る。
筒石のきすを釣るらむまたいくつ別れを惜しみ直江津へ行く
一瞬居眠りして反対車線へ、大型トラックとワゴン車とセダンが背後に停まる、救ってくえたんだ、わしの命を。
なんにまた大欠伸して青葉辺のほとほと死にき七十齢。
なんと云ふぞ帰りても来ぬ思ひわび夏の憂き夜を半月かかる


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