夏の歌

2007年8月 3日 (金)

夏の歌3

  松之山

 直江津からどこへ行こう、松之山へ行ってみようという、たいていわしがドライブコース。
田を植えて人を待つらむ吾妹子が松之山なむさ霧らひ深み
 大正時代の木造三階建て、松之山温泉凌雲閣はなを健在で、
地震にもこれやこれなむ耐え耐えて七十二年を凌雲閣は
 ドライブコースがあって霧の中を行き、ぐるっと回って帰って来るつもりが、国道117号線へ出てしまった、飯の六時には間に合ったが、とんだ遠足。
しかすがに大巌寺なむ牧場にぞ霧らひ晴れては牛の行く見ゆ
菖蒲草花はあれども山の井のしもつけ花ぞ妹にしあらむ
 信州へ入ると千曲川
吾妹子と千曲の川の廻らひに信濃へ行くか白雲浮かぶ
 善光寺へ行こう、中学は門前を過ぎて通う、思い出と云えば思い出の、うわいっぱいよったくって善光寺参り。
善光寺牛に引かれてもうでむはいにしへ今も何変はらずや
 マッカーサー司令でもあるまいし、病気が傳るから触れるなと書いてあったが、
いにしへも今ももうでぬ信心のつるつる禿げのおびんずるさま
 パチンコで鳩を撃ったり、
門前をおのれ通へる学校の半世紀を過ぎて夢に見るかや
 わしみたいな年寄りをなんでまた、もったいなやの、ー
欲りし我が愛し乙女が心映え清やけき世々を通いけるかも
井の辺も渡らひ行くに吾妹子が松之山なむ霧らひも隠もせ
妹と寝て若楓でのみずみずし紅葉ずるまでの秋を迎へて
 鬼無里から白馬へ抜ける道、
妹が子とまさきくあれば鬼無里なむ早苗を渡り白馬へ行く
 釣り竿を買って二人できすを釣る。
筒石のきすを釣るらむまたいくつ別れを惜しみ直江津へ行く
 一瞬居眠りして反対車線へ、大型トラックとワゴン車とセダンが背後に停まる、救ってくえたんだ、わしの命を。
なんにまた大欠伸して青葉辺のほとほと死にき七十齢。
なんと云ふぞ帰りても来ぬ思ひわび夏の憂き夜を半月かかる

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2007年8月 1日 (水)

夏の歌2

 浅間

 北口だと云ったのに、南口で待っている、印象が強かったんだって、二度の別れを。
なにすれぞ北と南に別れつつ雨に土鳩の鳴くさへ悲し
 忍び逢いだから始めての処がいい、では名前だけ知っている湯田中へ、
湯田中は父のつかれる温泉なれ時へて我れも妹とし問ふれ
 むきたまごからびーたんに発酵してだってさ
雨降るに葵咲くらむ夏なれや寝やれる妹があえぎ幽けく
 浅間山へ行こうといって、浅間園というのへカーナビ入れたら、とんでもない処へつれて行く、松本市郊外のりんご畑に、看板が一枚立つ、きえーやられた。
松本の舞ふは鳶か我れもまたひったくさったく浅間の煙
 仕方がない、では長久保から佐久へと中仙道を行く、ここはかつて我が故郷であった、出てより何十年、恐れ多くもさ、本陣に宿を借り。
しくしくに我れも出なむ長久保や笠取峠の松を幽けく
 小諸の懐古園に草笛を聞く。
草笛にいやなつかしき古城や伽藍堂なるレストランに寄り
 はないかだが咲いて、
花筏越しの真人が雲井にぞうそぶき行かむつれ添ふは誰そ
 高峰温泉という処へ行く、標高二千米。
吾妹子は何を悲しも小諸なる町を廻らひ山の方へ行く
高峰の温泉籠もらひしましくは妹らがりせむ鳴けや鶯
 小鳥の餌場があって、ひっきりなしにやって来る、りすも烏も。
赤げらのつがひに会ふて日は暮れて幾人宿る高峰の宿
 そう云えば途中にかもしかがいた、
火の煙浅間にあれや高峰の黒斑の山をかもしかの行く
 鶯の縄張り争いに参入。
鶯のうつろ鳴きせむみちのくや大空深く花を見て行く
高峰の湯にも美はしえ吾妹子が過ぎにしごとは忘れて思へや
一輪の花なれやかも我が愛でし初々しくに甦りつつ

 草津温泉へ一泊おまけ
花筏廻らへ行かな草津の湯えんまの釜も蓋を開くとぞ
我れをまたなんに涙の湯揉み歌心映えせむ江戸のむかしに
行く行くと鶯鳴くも草津の湯今をむかしに濁りあへつつ

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2007年7月31日 (火)

夏の歌1

 女の子二人の誕生祝いに罷り出る、例によって上野駅しのばず口に集合、介護老人をみなして迎えて、
しのばずの蓮すの池はなほ未だ問へるいくたび極楽とんぼ
 前の日鯉を釣りに行ったら、日に焼けてまっくろけ、
郭公の鳴きわたらへば阿賀野川野鯉は釣れじ日は照りまさる
 でもって、木村屋のあんぱんを買って食いながら銀ぶら。
木村屋のあんぱんを食らひ銀ぶらの二十一世を何変はらずや
 買ってえといってぶら下がると、グッチのバッグ三十万円とか、
女ども買ってえとてやぶら下がる銀座を行くか坊主文無し
年老ひて嬉し涙の鼻水かおねえちゃんとぞ銀座を泳ぐ
 日比谷公園はドイツ祭り、ソーセージとビールをぎっちり詰め込んで、
喧噪とビールをあをる夏なれや人はも知らにドイツ祭りの
 酔っ払って膝枕、
すずかけの下なる我れは膝枕バッハも知らじ永劫昼寝
 池袋に熊谷守一美術館を訪ね、
みなとして訪ねしこれは我が欲りし熊谷守一天狗の落とし札
妹が子がアクセサリーに手に入れし一筆書きのこは猫にして
 かぶと屋のうなぎを食う、三尾分も食って、きもの串刺しやら、心臓のぴくぴく動くやら、先生さまの奢りみたいだぜこれ、贅沢万歳。
清やけしや百戦錬磨の包丁のぴっくり動く心臓をこれ

 池袋のホテルに一泊、
きぬぎぬの逢ふ瀬をしのび吾妹子や池袋なむあしたを明けて
 駅前には黒い背広のやーさんがどっと押し出し、こりゃぶっ魂消、
池袋ごろつきどもが青夏の何にのさばる蒼天蒼天
 湘南ライナーに乗って横浜へ、水上バスで赤煉瓦倉庫の公園へ、
ぼらは跳ねくらげに浮いて浜っ子の波の辺なる青夏は行き
 赤煉瓦は大にぎわい、広場には白つめくさ、ヘリコプターを売っていたり、サンバを踊っていたり。
赤煉瓦いにしへ倉庫にこれあらむサンバを踊りつめ草かおる
 遊園地の向こうに帆船日本丸が、
初夏やみなと未来を祝がむ日本丸なむ順風満帆
 タイ料理店でハッピーバースデイ、二人の名を記すケーキもついてさ、
大乗の坊主にあるか妹らがりトムヤムクンにビールで乾杯
 ワシントンホテルは日本で一番人気だってさ、費用はリーゾナブルの上に、これは二十二階百万ドルの夜景付き。
バースデイ二人を落とせ百万ドルの夜景の中に仏の掌
 赤い靴というバスに乗って、おねえちゃん二人は老人介護のまあさ、港の見える丘公園にはバラが咲いて、
バスの名を赤い靴とふ風に舞へ港の見える丘公園に
 元町は銀座よりもいいんだってさ、電車に乗って鎌倉へ
チョコレートを食ひ元町やまっ昼間なんにも買はずていざ鎌倉へ

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