早春賦

2007年6月 1日 (金)

早春賊

  長久保
本陣の五葉の松は失せたれど我が欲りしそがただずまひける
故郷の時はうつりてなほなほに山川深み形せるらく
真田なる弓の稽古を我れもまた眺めせしまに庭のさんしゅゆ
松本にしくしく雨のあひ別れ古城の垣に青葉を深み

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早春賊

  鬼無里
小川なる天文台を廻らひにやまたず行くか花の春辺を
妹らがり花吹雪して七曲がり八つ曲がりせむ鬼無里の村を
戸隠の神なび深く仰がむはつぎねふ雪の山なみにして
戸隠の中社といはむもうでむは名物そばを何十年
愛しけやし黒姫あ子を行き通ひ新芽吹かへるぶなの林を
妹と我が幾夜寝ねやるここをかも赤倉といふぞつつじ花咲く
きぬぎぬの別れを悲し二人我が忍びあへせむ行方知らずも

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早春賊

  安曇野
宿らひは春ののげしの咲く野辺の乱れし妹は浴衣のみして
長くしやトンネルを抜け安曇野の会釈をせむははだれ白馬
安曇野に記さむものは花の店田辺のくまみか去り行く惜しも
安曇野にわれは記さむま悲しや高村知恵子の切り絵を求め

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早春賊

  妙高
湯沢ゆも花に追はれてみずばせふ残んの雪の妙高へ行く
新室は霧らひこもして白樺のこは唐松の芽吹きあへたる
忍びつつ宿れるものをモーツアルト浮かれ惚けて膝枕せむ
いもり池みずばせふなむかそけしや二人し仰ぐ妙高の峰
晴れゆくは美はしものぞかくのごとく満山芽吹く鶯の鳴く
またもかもここに別れて直江津のただに悲しもくはし乙女が

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早春賊

  湯沢
空しくはゴンドラを見上げ宿れるに残んの花のなほ盛りなり
芽吹きあへ大浴場に一人我が浸り思へるに妹も一人か
そこばくの湯沢を霧らひ花に花悲しき妹は夜もすがらして
他が客か集ひいよらむシャンデリア二人をのみに朝飯しつらむ
これはこれ大修行なる雲洞庵芽吹かひ行くも荘厳にして
僧堂の畳はくされいたずらに客のよるさへ新芽吹かへる

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早春賊

   初島
花は失せ若葉青葉を初島のいやしくしくに我が恋まさる
初島の石の浜辺の片思ひてんなんしょうのなんぞ花咲く
哀しきは若かえるでの初々し熱海乙女がこれな忘れそ
乙女らがしましく舟に乗れる日や潮騒濡れて初恋がてに

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早春賊

   笹倉
来てみれば人の住まはぬ心地して妹をいずこへはだれ消えつつ
妙高のスキーの家に湯も抜けて名物シェフのアイスクリームは
妹として山越え行けば笹倉のしくしく春のあは雪降れる
山を越え海なもがてに恋しくばしのび行かなむ春の雪降る
笹倉の山を深みか夜もすがら妹とい寝やる雪は降りしけ
晴れ行けばシルバーロードぞ烏帽子岳寝ねやる妹とたずさえにけり
フォッサマグナ妹とあひ見し玉なれや人の手指の姿こそして
二人しや更に心の幼びてすべり台なむ尻の皮を剥く
鱈汁を二人し食らひ能生のまた船を見てしがあひ別れけむ

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